前回は,どのようにして高いパフォーマンスを発揮できるチームを作り上げることができるのかを考えるために,有名なチームビルディング理論であるTuckmanモデルを紹介させていただきました。
今回はその実践編として,いかにすれば動乱期を乗り越えることができるのか,そしてテレワークが爆発的に普及し,働き方,チームのあり方が大きく様変わりしているWithコロナの環境下で,チームビルディングの観点でどのようなことを心掛けるべきかを解説したいと思います。
ココがポイント
チームビルディングのカギとなる動乱期の乗り越え方がわかる
Withコロナ時代のチームのパフォーマンスのためにすべきことがわかる
動乱期の乗り越え方 - 困難な時期をうまくコントロールする
前回の記事を読んで,
とは言っても,メンバーとの対立は避けてなるべく穏便にプロジェクトを進めたい
動乱期をどう乗り越えたらいいんだよ?一回チームがバラバラになったら,そんなにうまく関係修復できないよ!
という感想を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ごもっともだと思います。
和の尊重は日本の文化ですから,成立期から表面的に穏やかな状態が長く続いたり,対立が起こっても権威のない側が折れて権威のある側の意向が採用される,というケースも多いのではないでしょうか。
しかし,このような形で動乱期を避け続けていると,チームのパフォーマンスが高まらないばかりではなく,そこでメンバーが不満などを表出させないまま溜め込み,コントロールできない形で一気に噴出させてしまうことにつながりかねません。
そのような形で発生してしまった対立は,不可逆的な溝をメンバーの間に生むことになる可能性が高いですが,修復不可能な対立が発生してしまえば,動乱期に突入というより,そのままチームが崩壊してしまう危険さえあります。
では,どのようにすればよいのでしょうか。
動乱期をうまく乗り越えるコツは,リーダーが,動乱期に生じる対立をコントロールできる仕組みをチームに導入することだと考えています。
先述のような事態を避けるためにも,メンバーが不満を溜め込まずに適切に伝えられるような仕組みを作り,仕組みを通じてチームメンバー同士が対立を認識し,自律的に解消できるいくような文化を根付かせていくことが大事です。
例えばあなたがマネージャーであれば,
定期的なメンバーとの1 on 1の面談の場を持ち,メンバーが仕事に対する不満を抱えていないか気に掛ける
とか,
プロジェクトメンバー同士の対立については,表面化しているものであれば間に入って仲裁したり,まだ表面化していないが対立の兆候を感じ取った場合には,
どちらか一方のメンバーに対して,
個別にOOさんに対してフィードバックを求めたら?
などと,
対立をあえて表面化させ,その解消を促してあげる
などの対策が有効です。
このような仕組みを通じて,対立を恐れずに表面化させ,自律的に解消していく文化チームに根付かせることができれば,動乱期は乗り越えることができると考えます。
Withコロナの今,強いチームを作るためにすべきこと
2020年は新型コロナウィルスの世界的蔓延によってありとあらゆるものが急速に変容しています。
特に,在宅勤務制度の急速な導入を余儀なくされたことにより,働き方は大きく変わりました。
そんな中でもビジネスに携わる皆さんはプロジェクトチームの運用を継続していかなければならず,チームのパフォーマンス向上にも継続して取り組んでいかなければなりません。
では,チームのリーダーとして,今やるべきこととは何なのでしょうか?
本稿で説明してきたTuckmanモデルの段階毎に取るべきアクションは変わってくると考えます。
まずは自分のチームがどの段階にいるのか分析してみましょう。
成立期,動乱期には特にチームの状態に注意を払い積極的に介入したい
成立期や動乱期にいるチームにとっては,コロナでお互いに何を考えているのか見えづらくなっている今は,メンバーがお互いに対する不満を溜め込んだり,対立を表出させたままなかなか修復できなかったり,といった形でTuckmanモデルの段階移行がスムーズに進まなくなることが懸念されます。
成立期を乗り越えるには,リーダーがプロジェクトの意義など,積極的に情報を発信していくこと,またメンバーにもとにかく積極的な情報発信を心掛けるよう呼びかけることが大事です。
メンバー同士のコミュニケーションの場を意図的に作り出すことも有効でしょう。
また,動乱期への移行への布石として,各々のメンバーにミッション型のタスクを与え,メンバー同士の対立が生じる機会を意図的に増やすことも並行して行いたいところです。
動乱期に移行している場合,リーダーはメンバーとの個別のコミュニケーションをより重点的に行うといいでしょう。
わざわざ時間を決めて面談という形にしなくても,仕事の会話のついでに気になっていることがないか聞く,などでも構わないでしょう。
潜在的な対立の可能性を察知したり,表面化している対立には早めに仲介して解消したりすることが必要です。
オンライン飲み会は気軽に誘えて人選にも気を遣わずに必要な人だけを呼ぶことができますので,そうしたツールも有効に活用したいところです。
安定期,遂行期ならばリーダーの関与は最小限でも大丈夫
Tuckmanモデルの議論では,リーダーは成立期と動乱期において積極的にメンバーへの指示やチームワークのサポートを行うべきと一方で,安定期には指示を減らし,遂行期にはサポートも必要最小限にとどめてチームの自律的機能を最大限発揮させるべき,という示唆がなされています。
したがって,安定期に差し掛かっている状態ならば,メンバーは対立を解消し,協働に向けて自律的に自らの行動を調整し始めている状態ですので,リーダーであるあなたはメンバー同士の相互依存関係形成のサポートに徹するだけでよいでしょう。
最後に,チームが遂行期にいるのであれば,リーダーとしては積極的なコミュニケーションが継続してとれているかをモニターしていれば特に問題は起こらないでしょう。
ただし,在宅勤務という慣れない状況下でチームメンバー同士のコミュニケーションの総量が減り,チームの機能が低下してしまう懸念はありますので,リーダーは以前と変わらず活発にメンバー間のコミュニケーションが行われているかに注意を払い,もしコミュニケーションが停滞しているようであれば,コミュニケーションの場を用意してあげるなどの対策を講じるとよいでしょう。
まとめ
前編・後編の全2回にわたり,チームビルディングの理論であるTuckmanモデルの概要,キーとなる動乱期の乗り越え方,さらに激動の時代を迎えたビジネス環境においてTuckmanモデルの段階別にチームのパフォーマンス向上のためにすべきことを説明してきました。
将来の見通しは限りなく不透明ですが,最強のチームを作り上げた企業がこれからのマーケットをけん引していくことは確実であると思います。
本稿の内容を実践し,チームとして高いパフォーマンスを発揮し,未来を変えていきましょう!