今回は、経営者・経営企画・コンサルタントの皆さんには必須スキルと言ってもいい、フェルミ推定について解説します。
早速ですが、本日のポイントは以下の通りです。
経営者・コンサルタントには必須スキル! フェルミ推定とは?
そもそも皆さん、フェルミ推定をご存じでしょうか。コンサルティングファームやGoogle(止めたという話もあるけど…)等の面接で、よく課されるお題がフェルミ推定ですね。「名前は知ってる!」とか、「日本にカラスは何羽いるか計算するやつでしょ?」とか、なんとなく知ってる方は多いと思いますが、定義を明確に理解している人は少ないのではないでしょうか。
ポイント
フェルミ推定の定義:直接期に把握することが難しい量・金額等を論理的に推移行使、概算値を把握すること
フェルミ推定の定義は上記の通りですが、かみ砕いた表現をするならば、「捉えどころのない数字を論理的に推察すること」です。以下に、よくあるフェルミ推定の例題を記載します。
参考
- 商店街の和菓子屋さんの売上は?
- 日本にカラスは何羽いる?
- 青森県のリンゴの1年間の生産量は?
- 1台のバスには、何個のゴルフボールが入る?
「こんな質問されても分かるわけない!」という方もいるかと思いますが、フェルミ推定を用いれば、おおよその概算値を出すことはできます。但し、あくまで推察に過ぎないので、推察と実際の数字が大きくずれることもあります。特に、面接の場合は、ほぼ全ての要素を推察しなければならないので、フェルミ推定結果と実際の数字が大きくずれることも多々あります。しかし、フェルミ推定を用いた面接では、主に以下の点に着目しているため、ずれが大きくても特に問題はありません。
- その場で出された課題に対して俊敏に頭を回し、回答できるか
- 推定したい数値をロジカルに算出できているか
(計算した数値の正確性は求めていない) - 自分の考えを論理的に説明できるか
一方、実際のビジネスでは、リサーチを通じて、数字の正確性を高めていく必要があります。
フェルミ推定のビジネスでの活用事例
ビジネスでは、新規事業立ち上げ、事業計画・収支計画策定、業務効率化の効果試算等、様々なシーンでフェルミ推定のスキルが求められます。数値を求めるためのロジックを検討し、そのロジックに基づいた計算を行うという、フェルミ推定と同様のアクションが求められるのです。そのため、フェルミ推定は、戦略や計画の構想策定段階で求められるビジネススキルであり、経営者必須のスキルと言っても過言ではありません。
フェルミ推定のアプローチ方法
フェルミ推定には、トップダウン・アプローチ、ボトムアップ・アプローチの2つの手法があり、置かれている状況に応じて、とるべきアプローチを決める必要があります。意外と知られていないかもしれません。フェルミ推定を行う際の切り口は1つではなく、複数存在します。面接では、何故そのアプローチをとったのか、聞かれることもあるかと思います。一方、ビジネスでは、フェルミ推定するために必要な数字の根拠が収集できるか否かが大きな焦点になります。
ポイント
トップダウン・アプローチ:需要サイドから試算を行う手法
ボトムアップ・アプローチ:供給サイドから試算を行う手法
これらのアプローチ別に、どのようにフェルミ推定を行うのか、新規事業(健康食品)の売上予測の例を基に、上記の図に記載しております。ご覧いただいた通り、需要と供給サイドのどちらからアプローチをするかで、フェルミ推定のアクションが変わっていますね。フェルミ推定に正解はありませんが、アプローチは大きく分けて2種類存在するということを覚えておいてください!
フェルミ推定の実践例~日本の病院のマスク需要~
ここからは、日本の病院の年間のマスク需要をフェルミ推定してみたいと思います! 単純に、マスクって実際どれくらい必要なのか気になったので、このお題にしました笑
前提として、コロナ危機下では、全医療従事者が平均で1日2.5個のマスクを使用することとしています。1個でもよかったのですが、手術前後は必ずマスクを変えると思うので、全医療従事者が平均で1日1回弱手術に関与する想定です。科によっては、ほぼ手術に関与しない医療従事者や、日に何回も手術を行う医療従事者もいると思うので、ざっくり前提を決めました!
では、ここから以下の3Stepでフェルミ推定を進めていきたいと思います!
ポイント
- 因数分解する
- 各因数の数値を試算する
- 因数の試算結果を基に、マスク需要を試算する
まず、「Step1:因数分解する」では、上記のように、日本の病院のマスク需要を分解していきます。その際、ロジックツリーと呼ばれるフレームワークを活用しています。このように、因数分解を行うことで、日本の病院のマスク需要を以下ように計算できることが分かりますね。
ポイント
日本のマスク需要
=医療従事者数×1人当たり平均マスク使用量
=(大病院の数×1大病院当たりの平均医療従事者数+中小病院の数× 1中小病院当たりの平均医療従事者数)×(平均出勤日数/年×1人・1日当たり平均マスク使用量)
勿論、僕がこのように分解しただけで、別のやり方で分解することも可能です。何故、大病院と中小病院という区分を設定したかというと、大病院と中小病院では医療従事者数は大きく異なるので、「医療従事者=病院数×1病院当たりの平均医療従事者数」の「1病院当たりの平均医療従事者数」をいきなり計算することは難しいと感じたからです。
続いて、「Step2:各因数の数値を試算する」では、最小単位の各因数の推定を行います。
大・中小病院の数では、事前知識として、日本に病院は約10万存在することを知っていたので、そこから大・中小病院比率を推定することで、試算することにしました。この比率の算出ロジックは、脆弱なのですが、根拠がないよりはいいので、物心がついてから、僕の人生で大病院に行った比率(5%)を基に、算出しました。
大病院の医療従事者数は、本当はもっと真面目に計算する方法もあるかとは思いますが、面接では10分程度の時間でフェルミ推定を行わなければいけないという、時間的制約もあるので、友人の話ベースで200人と設定しました。一方、中小病院は、実際に僕が通う町医者を想定して、大体2名の医者と3名の看護師程度と設定しました。
平均出勤日数ですが、大体どの病院も週5~5.5日営業を行っていると記憶しているので、その営業日数=出勤日数として設定しました。
1日・1人当たり平均マスク使用量は前提を引用しました。
上記のように、各因数を整理できたので、あとはマスク需要を計算するだけです! 大分感覚的な要素が多くなってきたので、果たしてロジカルなのか、若干不安になってきました笑
最後の仕上げとして、「Step3:因数の試算結果を基に、マスク需要を試算する」では、Step名通り、試算を行います!
計算結果は約10億枚(958,750,000枚)でした!! これは年間の需要量なので、月換算すると大体1億枚弱のマスク需要があると推定されました。
では、答え合わせをしてみましょう…
官房長官は月1億枚、医師会は月4~5億枚のマスクが病院で必要になると言っています! 僕の出した答えは、官房長官の発表した数値に近いですね。
医療従事者の数を確認すると、医者は約20万人、看護師は約120万人いらっしゃるようで、僕の試算結果とほぼ一致しました。但し、その他の資格を持って、病院で働く方をいれていないので、その方をいれると150万人強になるのではないかと勝手に推察しています。
このことからわかるのは、医療従事者数自体は、そこまで大きくずれていないので、医師会が発表している数値は、医療従事者がもっと高い頻度でマスクを使うであったり、入院患者の分も用意する等のケースを想定しているのかと思いました。
以上で、フェルミ推定の解説を終わりとさせていただきます。